12/24(月)、の巻

 この日はクリスマス・イブである。
自分はクリスチャンではない。もう少し詳しく言うと、特段信仰を持たない
人間と言っていい。
 寺社仏閣巡りは好きだが、仏像や社殿の前で手を合わせたり賽銭をあ
げたりすることはない。お寺や神社の建物、いやむしろそれらよりも鬱蒼
とした木々に囲まれるその周囲の環境、言わば「宗教的雰囲気・神奈備」
を感じ取りに行く。自分のことながら実に不思議な人間だと思う。

 そんな特段の信仰を持たない、キリスト教者からすれば“異教徒”も昨今
のわが国を巡るこの数日間の世間一般の空気を感じざるを得なくなる。
 年に一度しか巡ってこない特別な日であることが直接関係のない自分に
も何となく伝わってくる。そしてそれはこの日の晩飯を何にするか、という問
題に連なる。

 夜にはキリストが生まれた日の前日にちなんで、キリストの血と肉を表す
赤ワインとパン(それもバゲット)を食べようと考えていた。赤ワインを飲むと
なると合わせるべきは肉料理である。
 日本では七面鳥が手に入らない(というか、食べる習慣なし)せいなのか、
この時期はこぞって鶏肉を食べるのが習慣化しているようだ。しかしこの習
慣、自分にとっては「バレンタインデーのチョコレート」「節分の恵方巻」「婚約
指輪は給料の3カ月分」等の根拠のあるような・ないようなことと同様、素直
に承服しかねる。だが現実問題としてローストビーフといった高級食材には
手が出ないので、已むを得ず鶏料理をスーパーで買う。
 モモ焼きは食べずらいので止めて、ローストチキンをスライスしたのを少々
と、あとはなんと「焼き鳥」「唐揚げ」である。赤ワインも同じスーパーで買った。
 バゲットだけはスーパーではなく近所のパン屋で買った。¥260@と値は
張るが、多分美味しいのだろう。

 夜になった。ラジオでAFNから流れるクリスマスソングを聞きながらワインと
「酒のアテ」をつまむ。
 そのワインだが選んだ銘柄が失敗だった。
 そもそも普段、ワインなど飲みつけないし銘柄等の知識も皆無である。加え
てフトコロも寂しい故、店頭に並んでいる手ごろな値段のものを買ったのであ
る。
 飲んでも何だか薬品のような味がして美味しくない。だが、わざわざパン屋
で買ったバゲットが美味しく、ワインの薬臭い味を中和してくれた。
 クリスマスイブにキリストの「最後の晩餐」の話はちょっと不謹慎だが、あの
場でも弟子たちと共に食したのは赤ワインとパンだった。さすがこのコンビは
最強だ、と感じた。美味いパンさえあれば、他に高級な肉料理などなくともい
くらでもワインが進むのではないだろうか、と思ったほどである。
 とはいえ、結局ワイン1本を空けてしまうほどには飲めなかった。
 買っておいた「鶏の唐揚げ」も腹いっぱいで食べられず、翌日のご飯のおか
ずにとその役割が変わった。
 でも自分の場合これ位でいいのだ、と納得しつつ今年のクリスマスイブの
「晩餐」を終えた。


 (以上)
 

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